PET(ポリエチレンテレフタレート)は、高い透明性と優れた強度を持つ汎用性の高いプラスチックです。しかし、その特性を最大限に活かすためには、適切な溶接技術が不可欠です。この記事では、PETの溶接における重要なポイントを詳しく解説します。

PETの溶接性

PETは、プラスチックの中でも比較的溶接性が良好な素材です。特に塩化ビニル(PVC)とは同等の溶接性を持つと言われています。

あくまでイメージとなりますが、一般的に溶接に用いられる各樹脂材料の溶接性は下記の通りの関係となります。PETはポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)よりも溶接性が良好といえます。

【簡単】 PET ≧ PVC >PE> PP > PC 【難しい】

しかし、PETはその高い透明度ゆえに、溶接時の外観品質が損なわれやすいという側面も持ち合わせています。そのため、高品質な溶接を行うには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

ポイント①:治具で固定し、点付け溶接から行う

溶接作業を始める前に、治具を使用してPETをしっかりと固定しましょう。これにより、溶接中のズレや歪みを防ぎ、正確な溶接が可能になります。また、最初に点付け溶接を行うことで、位置決めと仮固定を行い、その後の本溶接をスムーズに進めることができます。

ポイント②:溶剤での仮止めは避ける

PETへ、溶剤による仮止め接着を行うと、溶けすぎてしまい、乾くまでに多くの時間を要します。そのため、基本的には溶剤での仮止めは避け、上述の点付け溶接にて仮止めを行いましょう。

ポイント③:つなぎ目の隙間を無くすよう溶接を行う

大型の箱状製品を溶接する場合には、特に隅のつなぎ目と直線の溶接棒同士のつなぎ目で隙間が発生しやすいといえます。

隅の例を挙げると、箱状製品の隅は、右辺・左辺・高さ方向の3辺がつながりますが、仮に、それぞれ溶接すると1つの隅は3辺の溶接棒が重なり合います。溶接の出だし・終わりが隙間が発生しやすいポイントとなるため、このような場合には高さ方向を溶接した後、右辺・左辺をまとめて溶接するなどの対策が有効です。

直線の例では、2mのタンクを溶接する際、1mの溶接棒を2本使用することが一般的ですが、この溶接棒同士の結合部などは特に隙間の発生に注意が必要です。このような場合には、1つの溶接棒の溶接が終わった後、先の溶接棒の終わりとその後の溶接の出だしに注意を払い、しっかりと圧力をかけて溶接することで、隙間を無くすことが可能です。

仮に溶接棒同士のつなぎ目に隙間が生じると、強度不足や漏れの原因となります。そのため、つなぎ目の隙間を無くすよう溶接を行うことが重要です。

ポイント④:溶接ビードの乱れに注意する

溶接棒の状態も、溶接の仕上がりに大きく影響します。PETの溶接棒は光沢のあることが多く、溶接ビードの乱れが目立ちやすいといえます。そのため、加熱・圧力・角度・速度を考慮して、外観に影響が出ないよう、丁寧に作業を行いましょう。

ポイント⑤:溶接棒の種類が少ない

PETは溶接棒の種類が少なく、標準的な溶接棒のサイズしかありません。

したがって、厚みのある製品を溶接する際には、溶接棒を複数本重ねて使用する必要があります。そうなると、その分過剰に熱が加わるため、熱収縮が大きくなる恐れがあります。

一方で、厚みの薄い製品を溶接する際には、細い溶接棒がなく、溶接時に溶接棒とともに製品側も加熱してしまい、変形が大きくなる恐れがあります。

つまり、PETは、溶接棒の種類が少ない分、溶接時には高度な技術が求められます。

PETの溶接事例のご紹介

工場設備PET樹脂製分岐カバー

当製品の材質はPET樹脂(PET G)です。用途は搬送ラインの防塵カバーです。寸法は400x700x250ほどです。加工方法は曲げ加工は取っ手のみで、他はすべてトメ加工に接着と補強に溶接です。トメ加工とは接合部の端面を接合相手と同じ角度で斜め加工を行い、接合します。例えば120度の開いた面であれば、互いの端面を60度と60度で斜め加工をして接合します。通常は美観重視で端面を見せない用途に使用する方法ですが、今回のような複雑な角度の面で構成された場合にも都合が良い加工方法です。

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PET樹脂製搬送ラインカーブ部分カバー

当製品の材質はPET樹脂となります。天板は熱プレス成形で、側板はR曲げ加工で製作しております。どちらも木型で成形していますので低コストで製作できます。単品でのご依頼ですので、コストを抑えるため、成形後のトリミングに使用する、固定治具はプレス成形型を改造し流用しました。

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PETの樹脂/プラスチック溶接なら三栄プラテックにお任せください

いかがでしょうか。今回は、PETの樹脂溶接についてご紹介しました。三栄プラテックでは、樹脂の溶接を得意としています。「樹脂の溶接を検討しているが、委託先に困っている…」なんてお悩みがございましたら、お気軽に当社にご相談ください。