樹脂円筒タンクは、軽量・耐腐食性・耐薬品性に優れることから、化学薬品槽や排水処理設備など幅広い用途で利用されています。しかし、樹脂タンクの製作には、優れた溶接技術が欠かせません。本記事では、樹脂タンクに用いられる代表的な材質や樹脂タンクの溶接で押さえるべきポイントについて解説します。

樹脂円筒タンクに用いられる代表的な材質

樹脂タンクは使用環境に応じて、最適な材質を選定することが重要です。ここでは樹脂円筒タンクで主に使用される塩ビ(PVC)とアクリル(PMMA)の特長を紹介します。

塩ビ(PVC)

塩ビ(PVC)は、耐衝撃性・加工性・コストのバランスが良く、もっとも採用されやすい樹脂素材です。特に溶接による接合が可能であるため、製作の自由度が高く、製作納期も短縮することが可能です。

■メリット

  1. 耐衝撃性に優れ、割れにくい
  2. 溶接が可能な素材のため、強度を保ちつつ接合費の削減が可能
  3. 溶接構造により、納期短縮しやすい
  4. 樹脂素材の中では材料費が安価
  5. 既製の配管継手が豊富で、周辺部材との組み合わせが容易

■デメリット

  1. 透明度はアクリルより低く、やや青みがかった外観
  2. 耐熱性が低く、常用温度は約40℃まで

アクリル(PMMA)

アクリル(PMMA)は、透明度・外観品質に優れた樹脂素材です。外観から内容物を綺麗に見える構造が求められる用途に最適です。一方で、溶接ができないため、製作コストがUPしやすい点や納期が長期化しやすい点には注意が必要です。

■メリット

  1. 樹脂素材の中でも最高レベルの透明度
  2. 外観品質が非常に高く、美しく仕上がる
  3. 塩ビより耐熱性に優れ、常用約70℃まで対応

■デメリット

  1. 衝撃に弱く、割れや欠けが発生しやすい
  2. 材料費が高価
  3. 溶接ができず、重合接着が必須
  4. 加工コストが高く、納期も長くなりがち
  5. アニール処理が必要で、加熱炉のサイズにより製作サイズが制限される
  6. 既製の配管継手がないため、継手も特注製作が必要

樹脂円筒タンクの溶接で重要となるポイント

樹脂タンクは金属とは異なり、熱で変形しやすく、溶接条件によって真円度や強度が大きく左右されます。以下では溶接時の注意点と、仕上がりの品質を高めるための工程上の工夫について解説します。

1. 溶接熱による歪み(≒真円の崩れ)を防ぐ

樹脂タンクの製作で最も難しいのが「真円を維持したまま溶接すること」です。樹脂は熱を加えると柔らかくなるため、溶接途中でタンクが歪んでしまうケースが多くあります。そのため、矯正を加えながら溶接を進め、均一な形状を保つことが重要です。

2. 溶接棒の本数を増やしたり、リブを増やすことで強度を担保する

樹脂タンクの耐久性は、溶接部の構造に大きく依存します。強度が求められる用途では、溶接棒の本数を増やすことで接合強度を担保することが可能です。さらに、タンク側面や底面にリブ(補強材)を追加することで、たわみ強度を担保できます。設計段階で使用環境を想定し、最適な補強方法を選ぶことが重要です。

3. 精度の高いR曲げを行い、溶接作業に影響を与えないようにする

一般的に樹脂円筒タンクは、樹脂シートのR曲げ加工を行った後、溶接を行う方法で製作します。実は、この溶接前のR曲げ加工の精度が溶接品質を左右します。曲げ精度が悪いと、溶接時につなぎ目の隙間が発生し、強度不足や漏れの原因となる恐れがあります。

4. 内部の溶接ビードを抑え、滑らかに仕上げる

樹脂タンク内部の溶接ビードが大きいと、内容物が引っかかったり堆積したりする原因になります。特に攪拌用タンクでは、内部の滑らかさが求められます。そのため、ビードをできる限り抑え、内部を均一でスムーズに仕上げる加工が必要です。

樹脂の溶接なら三栄プラテックにお任せください!

いかがでしょうか。今回は、樹脂円筒タンクの溶接のポイントをご紹介しました。三栄プラテックでは、樹脂の溶接を得意としています。お悩みがございましたら、お気軽に当社にご相談ください。