ポリカーボネート(PC)は、高い透明性、耐衝撃性、耐熱性を持ち、様々な分野で使用されるエンジニアリングプラスチックです。中でも、耐衝撃性は、ABSの約5倍、塩ビの約10倍にあたります。しかし、PCの溶接は、他の樹脂に比べて注意すべき点が多くあります。当記事では、PCの溶接を成功させるための5つのポイントを詳しく解説します。

PC(ポリカボネート)の溶接性

PC(ポリカボネート)は、接着に用いる溶剤を使用すると溶けすぎて綺麗にならず、強度にもムラが発生します。また、接着部に熱風を当てると泡が出るという特性があります。そのため、基本的には接着ではなく、溶接にて接合することが一般的です。

一方で、PC(ポリカボネート)は、吸水性のある材料でありながら、高温でないと溶融しないため、溶接時にも発泡しやすいという特徴もあります。発泡すると溶接強度・外観品質が低下する恐れがあります。また、PC(ポリカボネート)の溶接棒は種類が限られており、溶接時での工夫が求められます。

上記を鑑みると、PC(ポリカボネート)の溶接性は良好とはいえず、高度な技術と知見が要求されます。

ポイント①:発泡を防ぐため、材料と溶接棒を乾燥させる

PC(ポリカボネート)の溶接において最も重要なことの一つは、発泡を防止することです。そのためには、溶接前に材料と溶接棒を十分に乾燥させることが重要です。例えば、材料が大きいなどの理由で乾燥させる手段がない場合は、溶接棒だけでも乾燥させることを推奨します。(この場合でも、わずかながら発泡してしまう可能性があります。)

発泡を恐れて加熱を控えると、十分な強度が得られません。乾燥させられない場合には、ある程度発泡を許容して、溶接を行うことを推奨します。

ポイント②:治具で固定し、点付け溶接から行う

PCの溶接にあたっては、専用の治具を使用し、溶接する部分をしっかりと固定した上で、点付け溶接から行うことを推奨します。これにより、歪みや反りを防ぎ、安定した溶接作業を行うことができます。

ポイント③:反りを予測して、逆方向へ固定する、もしくは、 治具で固定する

PCは高温になると反りが発生しやすい材料です。そのため、溶接前に反りを予測し、適切な対策を講じることが重要です。例えば、ある程度反る方向が予測できる場合には、あえて逆方向に固定し、対策を図ります。反りの予測が難しい場合には、治具でしっかりと固定します。

ポイント④:つなぎ目の隙間を無くすよう溶接を行う

溶接を行う際、つなぎ目に隙間ができてしまうと、強度不足や液漏れなどの原因となります。特に、PCは透明な素材であるため、隙間が目立ちやすいという特徴があります。

溶接棒を適切な角度で保持し、一定の速度と圧力で溶接を進めることで、隙間のない美しい仕上がりを実現できます。溶接中は、つなぎ目の状態を常に確認しながら作業を進めることが重要です。

ポイント⑤:外観を損ねないように注意する

PCは透明な素材であるため、外観品質が非常に重要です。特に溶接時の発泡や溶接ビードの高さの乱れは、外観を大きく損ねる原因となります。加熱、圧力、確度、速度を考慮した上で、外観を損ねないよう注意して溶接を行うことを推奨します。

PC(ポリカボネート)の溶接事例をご紹介

産業機器PC製ホッパー底(ポリカーボネート溶接)

当製品の材質はポリカーボネートになります。上下向きを反対にして置いた写真です。フランジ付きのホッパー部分は熱プレス成形にて製作し、NC加工でトリミングしました。円筒部分は繋ぎ目が二カ所あるR曲げ加工で製作し、溶接にて接合してあります。このような角度が大きいホッパーの場合は熱プレス成形を用いた一体成形が可能です。

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PC(ポリカボネート)の樹脂/プラスチック溶接なら三栄プラテックにお任せください

いかがでしょうか。今回は、PCの樹脂溶接についてご紹介しました。三栄プラテックでは、樹脂の溶接を得意としています。「樹脂の溶接を検討しているが、委託先に困っている…」なんてお悩みがございましたら、お気軽に当社にご相談ください。